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  • 執筆者の写真kibounce

ミラーボールの神さま

更新日:2021年6月8日

神というものは信じていない。

そんな私は音楽を信じるようになった。きっかけは至って簡単で、心理的に自分を追い込み生きる屍にしてしまった局員業をようやく決心して辞めたはいいが、さあこれから何をどうしようかと途方に暮れていた。家でウダウダしていたそんな時、それまでは仕事をする傍らたまに気になるイベントの夜に出かけても早番パートタイムでのみ参加となってしまっていた『(ダンスメインの)パーティー』という音楽を聴く踊り場へ、遅番のみならずサービス残業からのフルタイム復帰し、時間無制限な復活を遂げた。その間5年、ミラーボールの神様はずっと私を見守ってくれていた。

その前の5年間を振り返ると、闇に病んだ魂を失った生き甲斐のない心寂しい郵便配達員だったと自ら言わないと周りの誰にも想像がつかない程、精気を取り戻しきってしまった。『(ヒデさんありがとう)人間発電所』のエネルギーに満ち溢れている現在に至るまで、とにかく嫌で仕方なくなった職場を離れることで、50パーセントの痛みからは解放されたのだが、残りの半分は音楽の治癒力のおかげであると、これまでに信じて疑ったことがない。だから私の場合は一種、セラピーの一環やヒーリング効果として踊り続けているのかもしれない。

踊り先は、主に『クラブ』と呼ばれるナイトクラブをはじめとするバーやコンサート会場や野外フェスで、日替わりや時間割りでDJ達が選曲すると同時に、照明担当者がビートやリズムに合わせ光の動き具合を操作する中で、音の魔法に包み込まれ始めればダンスフロアで踊っている心とカラダ、この世に居るのか、あの世に居るのか分からないトランス状態に陥る。やがて夜明け近くに訪れる神聖な空気を味わう運びとなるあの瞬間や時間帯。これがまた快感(エクスタシー)なのだ。

高揚感と共に見上げれば、その空間中央の天井から吊るされているのが、神を祀る社の入口付近に建てられているのが鳥居ならば、私の音楽への信仰心を象徴している門(ゲート)こそがミラーボール(通称:ミラボーさま)である。通常厚さ3ミリ程度の四角い鏡状のタイルが施されていて、その鏡で表面が埋め尽くされた球体から成る。そのの一欠片が無数の瞳孔で、何兆万個もの踊る生命体を映し出し、パラダイスへと導くよう今日も光り輝く。必要不可欠なパーティー小道具のその存在はとても大きい。


以下ノートへつづく。



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